■感激した和紅茶の味
個人的には最近静岡茶から遠ざかっていた筆者も、少量の試飲一杯で、しばらく静岡を疎かにしていた(?)自分を反省することになる。さすがにお茶所の和紅茶はうまい。だが、理由はそれだけだろうか?
こちらが、静岡県島田市旧金谷町でお茶栽培に取り組んでいらっしゃる茶蔵さんの熟成紅茶。試飲させてくださった村田さんからは短い時間でいろいろな説明を伺った気がするが、一番スッと頭に入ってきたのは「世界農業遺産」(Globally Important Agricultural Heritage Systems)に認定された「茶草場農法」で育てたお茶が原料なのだということだった。
■自宅で抽出してみる
撮影に耐える紅茶カップを持ち合わせず、コーヒーカップで撮影。(^-^; ライティングしていないから水色が確認しづらいかもしれないが、商品名の通り琥珀色。とても綺麗だ。紅茶用の茶さじで平盛二杯を熱湯400㏄程度使って入れている。茶蔵さんからいただいた栞には、1人分=150㏄で5gと書いてあるので、明らかに使用量が少なかったが、なんのなんの。淡い甘みとまろやかなのど越しで、恍惚としてしまう。おいしさの理由が知りたい。茶葉が良質だから?熟成しているから?
■700年以上続く伝統農法
農林水産省の資料を見ると、認定は2013年。地域としては「掛川周辺地域」とされている。もちろん茶蔵さんの地域も含まれる。
畑の周りに点在する草地(茶草場)からススキなどの草を刈り取って、秋から冬にかけて茶畑に敷く農法で、この農法で作られたお茶は味が良いことで高い評価を得てきました。茶草は茶畑の土壌を豊かにし、土壌流出を防ぐ等の効果から地域の茶栽培に欠かせないものであるとともに、豊穣祈願のお供えとして地域の伝統文化の中にも利用されています。
[出所]農林水産省「世界農業遺産認定地域紹介 静岡の茶草場農法」
農水省が発行する広報誌「aff(あふ)」のバックナンバーからも紹介させていただこう。
冬の間、茶園に茶草を敷き詰めることによって、土の温度と湿度が保たれ、ふかふかの土壌になります。さらに、毎年茶草刈りで人の手が入る半自然草地が維持されていることで、絶滅が危惧される草原性植物「フジタイゲキ」や「ササユリ」「キキョウ」などの希少な植物が維持され、翅が退化して飛翔できない「カケガワフキバッタ」など固有の生物が生息できる環境が守られています。
[出所]農林水産省「aff(あふ)2013年7月号」
地域の伝統文化に根差し、環境にやさしく、おいしい茶葉を生み出す農法。それが茶草場農法だった。前掲資料には「茶園と茶草場の栽培面積比率は10対7。広大な傾斜地に広がる茶草を10月末から1月にかけて刈り取るのはほとんど手作業で、たいへんな重労働」という記述もある。このように汗水流し、手間暇かけ、上質な茶葉を生み出す伝統農法を守ってきた皆さんには、感謝をせずにいられない。
■「天然のワインセラー」天竜区大川相津トンネルで熟成
茶蔵さんの熟成紅茶は、「緑茶の王道品種」やぶきたを使用。下の写真はその入り口だ。
産業遺産の匂いがする。栞には「工事が中断し幻となった」とある。このトンネルが今天然のワインセラーとして活用されていることを含め、こちらの「大人のトンネル」で詳細が解説されている。
気になる内部。
いかにも「ひんやり」感が漂う。電気を使っていないということで、本当にエコだ。
■テイスティング・ノート
栞に、テイスティング・ノートがあったので切り出して貼付。
渋み:1
甘み:4
コク:2
となっている。
■より多くの人に愛飲されるために
これだけおいしい、緑茶に慣れ親しんだ日本人に飲みやすい紅茶なので、おそらくは知る人ぞ知る商品として固定ファンはしっかりいるだろう。
パッケージに「世界農業遺産」が訴求されていないことが気になり、調べてみる。楽天で検索すると、コメを中心にそれなりに出てくるが、アマゾンではほとんど出てこない。アメリカのアマゾンも検索してみたが、世界農業遺産が謳われているのは、日本茶だけであり、それも数えるほどしかない。訴求しても意味がないのか?と思いもしたが、認定済みの地域は15か国36地域で、認定数の多い日本と中国以外は、先進国以外が多い印象だ。訴求の価値がないのではなく、生産側、売り手側のマーケティング・プロモーションのノウハウの問題が大きいのではないかと思う。
お茶好きの消費者の皆さんにはぜひ試していただきたい紅茶だ。
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