世界農業遺産認定申請の前提
日本農業遺産の認定について、農林水産省からリリースが出されました。世界農業遺産の認定は、国連食糧農業機関(FAO)が行うもので、日本の場合農林水産省の認定がないと申請できないようです。
日本農業遺産の認定地域
世界農業遺産への認定申請に係る承認及び日本農業遺産の認定を行う地域の決定について
によれば、日本農業遺産として認定されたのは下記の8地域。
宮城県大崎地域
「大崎耕土」の巧みな水管理による水田農業システム
埼玉県武蔵野地域
武蔵野の落ち葉堆肥農法
山梨県峡東地域
盆地に適応した山梨の複合的果樹システム
静岡県わさび栽培地域
静岡水わさびの伝統栽培(発祥の地が伝える人とわさびの歴史)
新潟県中越地域
雪の恵みを活かした稲作・養鯉システム
三重県鳥羽・志摩地域
鳥羽・志摩の海女漁業と真珠養殖業-持続的漁業を実現する里海システム-
三重県尾鷲市、紀北町
急峻な地形と日本有数の多雨が生み出す尾鷲ヒノキ林業
徳島県にし阿波地域
にし阿波の傾斜地農耕システム
世界農業遺産への認定申請が許可されたのは3地域
前項のうち、今回農水省が、世界農業遺産への認定申請を許可したのは、宮城県大崎地域、静岡県わさび栽培地域、徳島県にし阿波地域……の3つである。
宮城県大崎地域
「大崎耕土」の巧みな水管理による水田農業システム
大崎地域とは、宮城県大崎市、色麻町、加美町、涌谷町、美里町のこと。資料には、歴史的に冷害や洪水、渇水が頻発する自然条件を耐え抜くために、巧みな水管理や屋敷林「居久根(いぐね)」による災害に強い農業・農村を形成。とある。興味を惹くキーワードはもちろん「居久根」。認定の趣旨は「災害に強い」と書いているが、認定地域ではない仙台市のホームページを見ると、 「仙台市東部の田園地帯に存在していた居久根の多くは,東日本大震災によって流失したり,塩害などで枯死したりして,大きな被害を受けました」とある。無論、東日本震災の津波はスケールが大き過ぎたので、これを以て災害に弱いとは言えない。
言葉だけではあまりイメージできないが、資料に添付されている写真を見ると、青々とした水田の中に点在する、民家とそれを囲む屋敷林の風景はとても美しい。
静岡水わさびの伝統栽培(発祥の地が伝える人とわさびの歴史)
認定された静岡県わさび栽培地域は、静岡市、浜松市、富士宮市、御殿場市、下田市、伊豆市、賀茂郡東伊豆町、賀茂郡河津町、賀茂郡松崎町、賀茂郡西伊豆町、駿東郡小山町である。日本の固有種であるワサビを、沢を開墾して階段状に作ったわさび田で、肥料を使わず湧水に含まれる養分のみで栽培する伝統的な農業を継承。というものだ。
にし阿波の傾斜地農耕システム
個人的には、世界農業遺産の認定申請を許可された3地域のなかで、もっとも興味を惹かれたのがここ。徳島県にし阿波地域(美馬市、三好市、つるぎ町、東みよし町)である。急傾斜地に茅をすき込んで土壌流出を防ぎ、独自の農機具を用いて斜面を階段状にせずに耕作する独特な農法で、在来の雑穀など多様な品目を栽培。写真は、山と急斜面の農地だけなので地味だが、在来種・雑穀・多品種というところがおもしろい。もちろん大量生産の商品を作るのには向かないが守り続けることによって、この地域にしかない資産となる。知財化することが重要で、安易な異業種連携でおいしいところを持っていかれることのないように、地元の皆さんにがんばってもらいたいと思う。